※脚:別途 

LAUAN 1925 TABLE

 

 

素材のエピソード

 

ラワン素材は主に東南アジアが産地の木材です。

東南アジアは台風の通り道でもあり、旅行にいかれた方はお分かりの通り、非常に湿度が高い地域です。

人にとって不快指数の高い湿度ですが、木にとっては実は最適な環境なのです。そんな環境で育つ南洋材と呼ばれる木材。

特徴的に見ると、主に赤みから黒み、そして紫みを帯びた色をしています。チーク材やマホガニー材もその仲間たちです。

 

僕から見るとこれらの木は、どこか土っぽい大自然を感じます。土着感というか赤土の大地から育った。というか。

太陽の光を燦々と浴びて育った南洋材達。そんな木達は皆エネルギーに溢れています。そんな中にラワン(LAUAN)という面白い南洋材があります。

木を薄く剥いて何層にもプレスしたのが、この積層ラワン材です。プレスする時に、縦と横を交互に貼り付けて作るので出来上がりの際、積層のラインがコントラストを作っています。

 

TSUKU-HAEは音楽(レコード)で言うとB面の一曲目が好きです。そこには実は作り手のコアの部分があって、ヒットとは無縁であっても、これを聞いて欲しかったんだ。と思われる製作者の意図が多く含まれている気がするからです。B面の1曲目に名曲は多いです。でも発売当時は、時代の空気と合わなかったり、時代を先取りし過ぎていたり、偏り過ぎて尖っている為にそれに対してピンとくるリスナーが少ない為、すぐに大衆ウケしてヒットには至らないことの方が多い。でも後々じわっとしみてきて、いつまでも心に残る。そこがB面の一曲目の良さです。A面の一曲目はヒットを狙う(大衆ウケする)曲で作られるので、分かりやすく、かつ爆発力もありますが短命に終わる場合が多いです。

 

TSUKU-HAEはそんなB面の一曲目を好んで製品作りをしますが、僕はラワンの積層材をB面の一曲目素材と捉えています。

そしてディテールによっては、この曲がさらに魅力を増すとも思っています。

 

ディテールのエピソード

 

1925年は世界にとっては実は記念するべき年で、間も無くあれから100年を迎えようとしています。

僕たちが日々使う携帯電話やPC、それらのデザインは先ず、ドイツのバウハウス(1919-1933)のお陰。そしてその期間中にあったパリ万博(1925年開催)のお陰だと言っても言い過ぎじゃないと思います。

 

APPLEのスティーブ ジョブスはバウハウスデザインひいてはそこから派生したBRAUNのデザインなどに多大な影響を受けてAPPLE製品を作りました。

おかげでどこよりもCOOLなデザインを纏った携帯やPCが生まれました。

1925年当時、装飾はまだ”ギンギン”の時代でした。手工業の向上と発展によりアールのディテールを多用した自然の造形づくり、アール・ヌーボーの出現やマイスターたちが作る複雑なディテール。そんなものがまだ欧州の時代の空気にありました。

そんな時代の空気が残る頃、未来を見据えたデザイナーやアーチスト、建築家たちがドイツを中心にモダンさと量産される工業製品の間を結びつけるデザインディテールを模索していました。コルビュジェを中心にしたパリの一部、そしてオランダのザ・スティル、ハンガリーのMAなどはそれらをさらに培養していたと思います。当時はロシアでもハンガリーでもアヴァンギャルドの風は吹き、ポスターやアートもモダン化して行きました。

そしてパリを中心にしたアートの世界においても新しさと実用性とデザインの関係性を研究・追求し、新しいアートが生まれ育ち始めました。

 

 

1925年のアール・デコ展(パリ万博)以来、”モダンさ”は世界中に発信され、これまで作られてきた装飾品を振り向いてみれば、それらが過剰に見えてしまうほどの新しい価値観に変えました。そして工業化、大衆化、量産化の中で”ミニマム”が台頭を始めました。

 

製品のエピソード

 

ラワン積層材を使って初期のアール・デコ様式の意匠にデザインを落とし込む。このハイブリッドな意匠は前述の様な背景によってできました。

さらに、近年リモートワーク化や2拠点生活などによって、より自然に近い場所へと人々の移動が起こりました。近代化の結果、出来上がった鉄とガラスとコンクリートの文明空間は、効率を求めた結果ではあるが、結果的に人間が長い時間耐えられない場所になってしまった。と言う事を多くの人が感じ取った結果だと僕は思っています。さらに室内には植栽が増えました。街の喧噪から逃れた人は静かな暮らしを求めたり、波の音、鳥のさえずりと共に暮らしたいと考える様になりました。これは日本に限ったことではなく、世界中がその様になっていると言うのも時代の空気の様に思います。

 

植栽があって、APPLE製品があって、仕事をしたりコーヒーを飲んだりする。そこにあるべき居心地の良い空間を作るテーブルとは。

これがこのテーブルを作る最大のキーワードでした。

 

そこには土っぽさとモダンさが必要と考えました。

従来よく使う、無垢のホワイトオーク材には土っぽさはなく、ウォルナット材でも良い感じは生まれそうだけど出来上がりが高級すぎる。

そこで今の現代の空気に合うちょうど良い素材としてラワンの積層材を選び、その素材を生かす着色や塗装方法を考え、何度も何度も試作品を

試すことで、ちょうど良い塩梅にたどり着きました。

 

このテーブルの最終的な狙いは昭和の時代。1950-1970年頃の日本にあったモダンの黎明期の様な雰囲気です。

その時代にイームスやウェグナーの作る家具、ルイス・ポールセンの照明やバングアンドオルフセンのオーディオは少しづつ日本にも浸透してきました。

それらの製品と同居できる様な、そんな仕様でデザインし、制作しました。

 

これから先、EV化、AI化の波は留まる事なく世界を席巻する事と思います。そんな時代にインテリアやプロダクトはどの様であったら良いのか。

TSUKU-HAEはいつも考えて製品を作っています。日本にまだ少しだけ残るヴィンテージマンション。と言われるところに、少しその答えが残っている様に僕は思います。そこに残る昭和のモダンさ。

 

これは感覚の問題ではありますが、僕が北欧を旅していた際、フィンランドのへルシンキの森の中にあるアルバ アアルトの自宅を訪ねました。その時に同様の感覚を味わいました。まさに彼の家のあちこちに昭和のモダンな空気が残っていて、そこにある二次元的なシンプルさは100%日本から影響を受けたものだと確信しました。アアルトと昭和(1950-70年)のモダンさ。そこに21世紀の新しくて古い(懐かしい)建築や居心地の良いインテリアの答えが含まれている様に僕は思いました。

 

このテーブルはそんな意図でできています。

テーブルには様々なテーブル脚も準備できます。ご興味ありましたらメール、もしくはお電話にてお問い合わせください。

 

 

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090-8107-5686 Y.Kurokawa(黒河)